業務委託契約と下請法って?

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Toshi
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業務委託契約下請法について学ぶ機会があったので、ざっくりとまとめてみました!

今回解説していく内容は以下です!

 本記事の内容

・業務委託契約の全体像
・請負契約と委任契約
・業務委託契約の注意点


業務委託契約の全体像

1. 業務委託契約の意義
2. 業務委託契約に関係する法律
3. 法律相互の関係と優劣

業務委託契約の意義

業務委託契約の意義(特徴)

①主に「特定の仕事」を依頼・発注する際に用いられる。
→仕事の内容に特に制限はない。
②委託先は会社か個人かを問わない。
→委託先が個人の場合でも(原則)労働法は適用されない。
③契約内容は、原則として自由に決めることができる。
→「業務委託契約」を直接規定する法律はない。

便利な契約形態であるが、しっかり内容を詰めておかなければトラブルが起きやすい。

業務委託契約の目的例

<成果物の製造等を委託するもの>
①物品の製造やシステム開発の委託
②コンテンツ・情報成果物の制作の委託、など
<役務の提供を委託するもの>
③修理、保守・メンテナンスの委託
④「人」によるサービス(役務)提供の委託、など
(一定のスキルを要する仕事の委託など)

仕事の内容が特定しているもの。

業務委託契約に関係する法律

業務委託契約の内容 = 民法+特別法+商慣習

民法契約に関する一般法。契約事由の原則の下、契約の成立要件、債務不履行、契約不適合責任など最低限の共通事項を定めるほか、請負契約、委任契約について個別に定める。
特別法民法を補足・修正する「民法以外の法律」をいう。
独占禁止法、下請法、商法、労務法、知的財産法など多数存在する。
商慣習特に会社間の契約においては、業界ルールなど商習慣も法律と同様に用いることができる。
→「社内ルール」ではない。

法律相互の関係と優劣

適用順 特別法 > 商慣習 > 民法
業務委託契約は民法を基礎とするが、特別法や商習慣があれば、それらを優先する。

業務委託契約の構成

一般に、民法上の「請負契約」「委任契約(準委任契約)」をベースとする。
→但し、任意規定が多く、契約自由の原則により、当事者の合意を優先する。

特別法の規定は強行規定が多く、そのまま契約内容とするのが原則である。
→当事者は変更・排除できない。

商慣習・業界ルールがある場合、上記法律の強行規定に反しない限り、契約内容とすることができる。

注意すべき特別法は?

独占禁止法①私的独占②不当な取引制限③不公正な取引方法等を禁止する。契約上は、特に③に注意を要する。
下請法(下請代金支払遅延等防止法)不公正な取引方法に焦点を当てた法律であり、特に親事業者の優越的地位のを濫用禁止する。
その他①商法→納品物の検査・通知義務など
②労働法→偽装請負の禁止など
③知的財産法→知的財産権の帰属や知的財産権の移転・ライセンス登録など

請負契約と委任契約

  1. 民法が規定する契約の種類と特徴
  2. 請負契約の規定
  3. 委任契約の規定

民法が規定する契約の種類と特徴

民法が規定する契約の種類と特徴

民法は典型的な13種類の契約を規定している典型契約

典型契約の種類①

<財産の移転を伴うもの>

贈与契約金銭や物(動産・不動産)など、財産を無償で相手方に与える契約。
売買契約物や権利を相手方に売却する契約。「譲渡契約」と呼ばれることもあるが、贈与とは異なる「有償譲渡」を指す。
交換契約物や権利を相手方と交換する契約。

典型契約の種類②

<貸借に関するもの>

消費貸借契約金銭などを相手方に貸し付け、それを相手方が消費した後、同じものをもって返還してもらう契約。
使用貸借契約物(動産・不動産)を無償で相手方に貸す(使用させる)契約。
賃貸借契約物(動産・不動産)を有償で(賃料をもらって)相手方に貸す(使用させる)契約。

典型契約の種類③

<仕事・役務に関するもの>

雇用契約一方が、相手方の労働に従事し、それに対して報酬をもらう契約。
→仕事は不特定。
請負契約一方が、ある(特定の)仕事を完成させ、それに対して報酬をもらう契約。
委任契約一方が、相手方の法律行為(契約等)や事務を代理・代行する契約。このうち事務の代行をするものを「準委任契約」という。
寄託契約一方が、相手方に物品を保管を委託する契約。

典型契約の種類④

<その他の契約>

組合契約複数の当事者が出資をして、共同で事業を営む契約。
終身定期金契約一方が、自己、相手方又は第三者が死亡するまで、定期に金銭その他のものを相手方又は第三者に給付する契約。
和解契約当事者が、互いに譲歩して、その間に存在する争いをやめる契約。
示談の一種。

典型契約の特徴

契約事由の原則

契約内容(任意規定)は、原則として当事者が、その合意で自由に定めることができる。また、典型契約以外の契約(混合契約・非典型契約)も認められる。

契約の成立方法

典型契約は、いずれも原則として当事者の合意のみで成立する。

諾成・不要式の契約。

契約違反の責任

契約違反をした当事者は、債務不履行責任(損害賠償責任等)契約不適合責任(追完責任)を負う。

請負契約の規定

請負契約の規定①

請負人の地位請負人は注文者と対等の関係であり、注文者の指揮命令を受けない。
→これに違反すると偽装請負となり、労働法に違反する。
報酬の支払時期報酬の支払は、仕事終了後の「後払」を原則とする。
→建設請負を除き下請法に注意。
中途解除(解約)時の
報酬請求権
請負人の責任や不可抗力で契約が解除された場合でも、それまでした仕事の割合に応じた報酬を請求できる。

請負契約の規定②

注文者からの中途解除注文者は、いつでも請負人の損害を賠償して請負契約を解除することができる。
注文者の破産注文者が破産手続開始決定を受けたときは、請負人又は破産管財人から請負契約を解除することができる。
その他、請負契約(民法規定)の特徴下請負を禁止する規定はない。
②請負人に生じた費用(経費)償還の規定はない。
③請負人には、注文者への進捗状況の報告義務はない。

委任契約の規定

委任契約の規定①

受任者の地位受任者は受任者と対等の関係であり、委任者の指揮命令を受けない。
→これに違反すると偽装請負となり、労働法に違反する。
報酬の支払時期報酬付の場合の報酬の支払は、仕事終了後の「後払」を原則とする。
→特に準委任では下請法に注意。
中途解除(解約)時の報酬請求権受任者の責任や不可抗力で契約が解除された場合でも、それまでした事務の成果に応じた報酬を請求できる。

委任契約の規定②

費用の償還・損害賠償の請求受任者は、委任者に対して、委任事務を処理する上で必要な費用の前払や償還を請求することができる。また、受任者は、自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。
委任者による報告受任者は、委任者から請求された場合や委任の終了時には、事務処理の状況・経過や結果の報告義務を負う。

委任契約の規定③

再委託(復受任者の選任)受任者は、委任者の許諾又はやむを得ない事由があるときを除き、その事務を再受託することができない。
委任契約の解除等いつでも、一方から委任契約を解除することができる。
その他、委任の終了原因委任者又は受任者死亡したとき。
委任者又は受任者破産手続開始決定を受けたとき。
受任者後見開始の審判を受けたとき。

業務委託契約の注意点

  1. 下請法の適用範囲
  2. 親事業者の義務
  3. 親事業者の禁止行為

下請法の適用範囲

下請法は事業者同士が行う全ての取引に適用されるものではなく

下請取引 = ①取引の内容 + ②資本金区分

①、②の条件に合致すれば適用される。

下請法の適用対象取引①

製造委託物品を販売し、又は製造を請け負っている事業者が、規格・形状・デザイン・ブランドなどを指定して、他の事業者に物品の製造や加工などを委託することをいう。
→「物品」には家屋など建築物は含まない。
修理委託物品の修理を請け負っている事業者が、その修理を他の事業者に委託(再委託)したり、自社で使用する物品を自社で修理している場合に、その修理の一部を他の事業者に委託することをいう。

下請法の適用対象取引②

情報成果物作成委託ソフトウェア、映像コンテンツ、各種デザインなど、情報成果物の提供や作成を行う事業者が、他の事業者にその作成作業を委託することをいう。
役務提供委託運送やビルメンテナンスをはじめ、各種サービスの提供を行う事業者が、請け負った役務の提供を他の事業者に委託(再委託)することをいう。
→建設業を営む事業者が請け負う建設工事は含まない。

資本金区分①
1. 物品の製造委託・修理委託、プログラムの作成委託、運送・物品の倉庫保管および情報処理の役務提供委託

親事業者→下請事業者
資本金3億円超資本金3億円以下
資本金1,000万円超
3億円以下
資本金1,000万円以下
又は個人

資本金区分②
2. 情報成果物作成委託(プログラムを除く)、役務提供委託(運送・物品の倉庫保管および情報処理を除く)

親事業者→下請事業者
資本金,5,000万円超資本金,5,000万円以下
資本金1,000万円超
5,000万円以下
資本金1,000万円以下
又は個人

親事業者の義務

親事業者の義務①

3条書面(発注書・注文書)の交付親事業者は、下請事業者への発注後、直ちに、下請代金の額や支払期日等の一定事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。
承諾を得れば電子メールによる提供も可能。
5条書類(取引記録)の作成と保存親事業者は、下請事業者の給付、給付の受領、下請代金の支払その他一定の事項を記載した書類又は電磁的記録を作成し、2年間保存しなければならない。

発注書(3条書面)の記載事項例

①当事者(双方)の名称・氏名
②発注年月日
③給付の内容(品名・規格・仕様等)
④納期(役務提供委託の場合、提供期日・期間)
⑤納入場所
⑥検査を要する場合の検査完了期日
⑦下請代金の額(又は算定方法)
⑧下請代金の支払期日
⑨下請代金の支払方法、など

取引記録(5条書類)の記載事項例

下請事業者の名称・氏名
②発注年月日
③給付の内容(品名・規格・仕様等)
④納期(役務提供委託の場合、提供期日・期間)
受領した給付の内容・受領日(役務提供委託の場合、提供された日・期間)
検査をした場合の検査完了日・検査結果等
給付内容に変更があった場合の、変更内容・理由
⑧下請代金の額(又は算定方法)、下請代金の支払期日
支払額に変更があった場合の増減額・理由
支払った下請代金の額、支払日、支払方法、など

親事業者の義務②

支払期日の定め下請代金の支払期日は、親事業者が下請事業者の給付を受けた日から60日以内で、かつ、できる限り短い期間内において定めなければならない。
→定めがないときは、給付受領日=支払期日。
遅延利息親事業者が下請代金の支払を遅延した場合、給付受領日から60日を経過した日から支払日まで、未払い代金に年14.6%を乗じた額が遅延利息とされる。

親事業者の禁止行為

親事業者の禁止行為として…

下請取引の公正化及び下請事業者の利益保護のため、親事業者による11項目の行為が規定されている。
・下請事業者の了解を得ている
・親事業者に違法性の認識がない
としても、規定に触れる行為は下請法違反となる。
①下請事業者からの給付の受領拒否
②下請代金の支払遅延、③下請代金の減額
④受領後の返品(取引りの強制)※、⑤やり直し
⑥通常支払うべき金額より著しく低い下請代金額
⑦正当理由のない自社指定物の購入等の強制
⑧有料支給原材料等の対価の早期決済
⑨行政機関への通報を理由とする不利益な取扱い
割引困難な手形による下請代金の支払
⑪自社に対する金銭その他の経済上の利益の要求

下請事業者に帰責事由(故意・過失等)がある場合を除く。

まとめ

Toshi
Toshi

いかがでしたか?「業務委託契約」は、委託者が受託者に対して、何らかの業務を委託する内容の契約で、「下請法」は、優位な立場にある親事業者から下請事業者が不当な扱いを受けないようにするための法律でした!

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